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執筆者の写真Ohtsubo Wakako

Wageningen大学の国際化戦略

大坪@Wageningenです。


記録的な今夏の猛暑の影響か、秋も日差しが多く暖かいWageningenでしたが(下の写真参照、今はかなり葉が落ちてしまいました)、今週から風・雨・氷点下とオランダ本来の姿を取り戻してきたようです。

娘(8歳)は学校にも慣れたようで、オランダ語の教科書を見せながら発音を教えてくれるのですが、言葉を見ても発音が全く分からない(分かっても発音できない)のがオランダ語の難しいところです。ユトレヒトのミッフィー(うさこちゃん)の博物館で、オランダの子供たちが何度も「ナインチェ(nijntje、うさこちゃんという意味)!ナインチェ!」と言っていたので、"ij"が「アイ」と読むことだけはやっと覚えましたが、米(rijst)という言葉は何度練習しても発音できません。


幸いWageningen大学は全くオランダ語ができなくても、英語だけで完璧に学問・研究ができる環境が整っています。学生時代にドイツに留学していた時は、大学や研究所で英語は通じるものの、研究室の実験プロトコルや安全ラベルなどの表示、学内の看板、学食のメニューなどはドイツ語だったので、ドイツ語の知識がないと色々と不便でしたが、Wageningen大学ではこれらが全て英語表示になっているのが驚きでした。メールや書類関係も、公式の書式は全て英語で、非公式のオランダ語の書類でも必ず英訳がついてきます。


広報誌もオランダ語版と全く同じ情報が掲載された英語版(国際版)があります。学内広報誌「RESOURCE」は、書店で販売できるレベルのデザインの冊子で、Wageningen大学の研究成果や政治経済が大学の研究に与える影響、研究倫理の問題、教授へのインタビュー、学生のクラブ活動、留学生の本音などが、読みやすい短い記事と写真でまとめられており、読みごたえがあります。学外広報誌「WAGENINGENWORLD」もスタイリッシュなデザインで、Wageningen大学の研究が、人々の健康や生活の質の向上にどのように役に立っているか、大学の個性や魅力を一般社会に伝えるメディアになっています。

ウェブ上でも読めますので、是非読んでみてください。

RESOURCE(学内広報誌):https://resource.wur.nl/en.htm#tab0

WAGENINGENWORLD(学外広報誌):https://wageningenworld.wur.nl/issue/september-2018/cover/

学内や研究所内の英語環境を徹底することで、海外から優秀な人材を集められるというだけではなく、留学生が「お客様」としてではなく、Wageningen大学の代表として主体的に学問や研究に取り組むことが可能になり、学生は世界の農業の現場で何が問題となっていて、何を解決しなくてはいけないか、といいう課題について現場の声を聞き、それを解決するための新しいアイディアを博士課程の研究で実践することができます。


また、オランダ政府や国内企業は、個人の研究に積極的に投資し(研究費だけではなく学費や生活費も支給します)、その成果を利用して国際社会や国際市場におけるプレゼンスを強化しています。大学も企業も、国際的背景にかかわらず、学生を手厚くサポートするだけではなく、利益をもたらす人材として積極的に利用することを明言しているため、全ての学生が同等の責任感を持って研究や教育に取組んでいるように見えます。


Wageningen大学が、学内で使用する言語を英語に統一することに決めたのが2009年で、その後10年以内にオランダの一大学から国内No.1の総合大学、世界でトップの農業大学になったということなので(オランダ政府の取り組みも大きかったと思いますが)、大学の英語環境の整備と国際化が大学のランキングに直結していることがよくわかります。

最後にWageningen大学に来て気がついたことは、留学生や外国人スタッフの積極的な受け入れによって、言語や文化の違いから生じる問題が洗い出されやすく、それを解決する手段として、システムの簡易化や統一化が進んでいることです。結果として、大学運営が効率化され、研究へのエフォートが増えているようです。英語の公用化だけではなく、「様々な手続きをシンプルにする」取り組みが、日本の大学の国際化において必要ではないかと思います。

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