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オランダの天気と農業について考える

オランダも完全な冬時間となりました。日の出は朝8時半くらいです。

娘の学校に送っていく時間はまだ薄暗く、大学に到着すると日の出が拝めるような感じです。12月中旬頃から、雨や風の日が多く、1日中薄暗いので、日本の明るくてスキッとした冬が懐かしく思えます。

こちらでは毎日自転車生活なのですが、オランダの冬は、海側から何にも遮られずに雨雲がどんどん流れてくるので、晴れたと思った瞬間に雨が降ってきたり、台風レベルの風が吹いてきたりします。私は、buienrader.nlというサイトで1時間ごとの雨雲の動きをチェックしながら行動していますが、それでも先月から20回以上はずぶ濡れになっているので、だんだん雨に濡れることに抵抗がなくなってきました。実際、オランダ人は雨が降ってきても傘を差しませんし、娘の学校でも、雨の中子供がびしょ濡れになって外遊びをしているようです。


オランダは全く天気に恵まれていない国なのですが、米国に続いて世界2位の農産物輸出国です。天気が悪いという事実を完全に受け入れ、屋内でも行うことが可能な方法で、農産物の生産性を発展させてきたようです。2017年の農産物の輸出額は1010億ユーロ(13兆円程度)で、毎年その額は増加していますが、生産量が世界1位のトマトや唐辛子、花や種子は、全て屋内で栽培されています。

オランダの天気に左右されない農業技術は、この20年くらいで大きく発展したようですが、そのイノベーションはオランダ政府と Wageningen大学(とその関連研究機関、WUR)が強力に推し進めてきたものです。このオランダの農業イノベーションについて、2017年のナショナルジオグラフィックに“This tiny country feeds the world(日本語版:https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/magazine/17/082100013/082200003/))”

というインパクトのある記事が掲載され、当時眼科の待合室で読んだ時に私自身も大変衝撃を受けました)。英語の記事の方は、現在ネットでも読めるようになっています。


ナショナルジオグラフィックのサイト

https://www.nationalgeographic.com/magazine/2017/09/holland-agriculture-sustainable-farming/


ネット記事では、WURの取り組みがさらにクローズアップされ、各国から留学中のWURの学生のインタビューの動画なども見られますので、ぜひ見てみてください。


広大な温室やハイテクな動物飼育施設を使ったオランダ式の次世代型農業スタイルは、天気に左右されずに生産性の高い農業の成功例として世界に注目されている訳ですが、このような集約型農業政策は、オランダの田舎の伝統や文化を犠牲にしてきたという一面もあります。風車と小さな家と牛や馬やニワトリが一緒に暮らす特徴的な家族経営の小規模の農家は、オランダから消えつつあります。


地産地消、太陽や土の恵み、厳しい自然との共生、などがスローガンとして掲げられる日本の農業を改革する上で、オランダが主導する次世代型農業のメリットだけが語られるのは、ちょっと危険だと感じます。また、非効率であっても、品質の高い農産物を作り出す国内の小規模農家をサポートするための努力も必要であると感じます。「オランダから学ぶ」という時、最終的なアウトプットだけではなく、現在のオランダの農業で起こっている問題点についても、目を向けていく必要があるのではないでしょうか。

実際、WURの教授(宮崎産業経営大学の教授でもあるようです)であるJos Verstegen氏が、日本の農業の現状や対策と照らし合わせ、オランダの農業改革の礼賛に疑問を投げかけるブログ記事を書いています。皆様はどう思われるでしょうか?


農業で問題を抱えているのは、日本ではなくてオランダ?

https://weblog.wur.eu/economics/japan-doesnt-agriculture-problem-netherlands/

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